オープンイノベーションとは?導入のメリットやステップ、成功に導くカギを解説

オープンイノベーションとは?

オープンイノベーションは、外部企業と連携して新規事業の創出や研究開発に取り組むことです。21世紀以降に欧米から普及し、日本でも2015年頃から活性化してきました。

外部の協力先は、スタートアップ、大学・研究機関、異業種企業、自治体など多岐にわたります。従来の閉じられた企業内の枠組みにとらわれず、多様な視点やリソースを活用することで、よりスピーディかつ柔軟な価値創造を目指します。

近年では、製品開発にとどまらず、サービス設計やビジネスモデル構築の分野にも適用されており、新しい市場機会の探索手段としても注目を集めています。企業規模に関係なく、特にDX推進や新規事業を担う部門では、オープンイノベーションは競争優位性を築くうえで欠かせない戦略となりつつあります。

オープンイノベーションが注目される理由や、ビジネスを成功に導く活用方法などを詳しく解説します。

一般的なイノベーション(クローズドイノベーション)との違い

クローズドイノベーションとは、企業が社内の研究・開発部門など「自前のリソース」に頼り、独自に技術革新を進めるスタイルを指します。情報漏洩や競合優位性の確保といった理由から、機密性の高い開発体制を重視する傾向があります。

一方、オープンイノベーションは、社外の知見や技術を積極的に取り入れる点が大きな違いです。例えば、スタートアップとの共同開発、大学との共同研究、業界を超えたコラボレーションなどが具体例として挙げられます。短期間での市場投入や、新規分野への挑戦といった目的にも適しており、クローズドでは得られにくい多様なインプットが得られることが魅力です。

現在のように市場変化が激しく、単独での対応が難しい時代においては、クローズドとオープンをうまく使い分ける「ハイブリッド型」のアプローチも増えています。

オープンイノベーションが注目される背景

オープンイノベーションが広く注目されるようになった背景には、技術進化の加速、市場の変化のスピード、人材の流動性の増加といった複数の要因があります。

まず、ITやAI、バイオといった先端分野では、1社だけで全ての技術や知見を抱えるのが現実的ではなくなっています。また、顧客ニーズの多様化により、従来の製品開発モデルだけでは競争に勝てない状況が増えています。

さらに、スタートアップの台頭により、既存企業も外部との連携を前提とした戦略が求められるようになりました。政府・自治体による産学連携支援やオープンイノベーション政策も追い風となり、企業規模を問わず導入が加速しています。

オープンイノベーションの現状

欧州を中心に活発に行われている

欧米諸国では、すでにオープンイノベーションは一般的な経営戦略のひとつとなっています。P&Gの「Connect + Develop」やGEの「GE Open Innovation」など、企業規模に関係なく積極的な外部連携が進んでいます。

特に欧州では、EU主導の研究開発プログラムを通じて、企業・大学・行政が一体となった共創が活発に行われています。近年ではアジア圏でも中国・韓国・シンガポールを中心に、スタートアップエコシステムとの連携を通じたオープンイノベーションが進展しており、グローバルに競争が激化しています。

日本は一部活発になってきたものの、まだ遅れている

日本では、大企業を中心にオープンイノベーションの取り組みが増加しています。CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の設立や、アクセラレータープログラムの導入など、スタートアップとの連携を図る動きが活発化しています。

一方で、組織文化の壁や意思決定の遅さ、失敗への許容度の低さといった課題も根強く残っています。特に中堅社員にとっては、実務を担う中で「いかに社内調整を行い、外部とスムーズに連携するか」が現場レベルでの大きな課題です。そのため、戦略だけでなく、現場での実行体制や推進スキルがより重要になってきています。

経済産業省では、企業がイノベーションを創出するための環境整備に取り組んでいます。
日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針をまとめて資料として公開したり、イノベーション経営の普及等に係る調査を行っています。さらに、自社でオープンイノベーションの導入を検討しているがコスト面がネックになるケースを想定し、国内の企業が外部組織への投資を後押しする「オープンイノベーション促進税制」という制度もあります。これは、国内の事業会社がスタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、株式の取得価額の25%を所得控除できるというもの。国としてもオープンイノベーションに注目しているようですね。
参照:オープンイノベーション促進税制(経済産業省)

類似キーワード「共創」との違い

オープンイノベーションと似た言葉に「共創」があります。二つの言葉の違いは以下の通りです。

  • オープンイノベーション:自社に足りない外部の知識や技術、アイデアを取り入れることに重点を置く活動
  • 共創:企業の垣根を超えて対等なパートナーシップを通じ、全ての参加者が共同で新しい価値を創造する活動の全般

オープンイノベーションは、外部の経営資源と社内の経営資源を戦略的に組み合わせることで、新たなイノベーションを生み出すことを指します。よって、オープンイノベーションは広義の意味で、共創の手段の一つと考えてよいでしょう。

共創についてもっと詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。

CO-CREATION「共創」 共創のメリットや期待できる効果、企業の共創事例までご紹介

共創のメリットや期待できる効果、企業の共創事例までご紹介

オープンイノベーションを導入するメリット

オープンイノベーションは、新しい可能性を広げる強力な手法です。ここでは、その主要なメリットを4つご紹介します。

  • 事業推進のスピードが向上する
  • 低コストで開発できる
  • 新たな知識や技術を獲得できる
  • 市場や販路を拡大できる

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

1. 事業推進のスピードが向上する

自社では一から開発するのに時間がかかる場合、すでにある他社商品のノウハウを使えば、自社商品に応用させることで、開発にかかる時間を大幅に短縮できます。

自社で新たな製品を開発する場合、今までの知見やノウハウが活用できない新商品を作ろうとすると、一から人材を確保し、開発していくのは時間もお金もかかります。新たな設備の導入や、取引先探しが必要になることもあります。

すでにその製品に関する知見やノウハウある他社とのオープンイノベーションにより、開発にかかる時間を大幅に短縮できます。

2. 低コストで開発できる

通常、技術開発には、市場調査やテストマーケティングなどの企画段階においても多大なコストがかかります。 外部パートナーと協力することで、これらの負担を分担できます。

すでにその分野の知見がある企業と連携すれば、顧客データを分析・活用することができます。

他にも、クラウドソーシングなどを活用し、企画の一部などを外部パートナーに依頼することで、多くのアイデアを低コストで集められるだけでなく、顧客のニーズにマッチした商品開発が可能になります。

3. 新たな知識や技術を獲得できる

イノベーションのイラスト

外部との連携により、最新の技術やトレンド情報を柔軟に取り入れることが可能です。

自社だけでなく、独自の技術を持つ組織にとっても、新たな価値を創造する手段になり、お互いがWin-Winの関係になれます。

オープンイノベーションを導入することで、それぞれの企業にとって新たな知識や技術が得られ、既存事業の発展や社内の人材育成にも良い影響を与えます。

4. 市場や販路を拡大できる

外部組織と連携することで、外部組織の持っていた顧客や見込み客に認知されるきっかけになります。自社と異なる顧客層にアプローチするチャンスが生まれ、今まで到達できなかった市場への宣伝効果が期待できます。

例えば、海外市場への進出を考えている場合、現地企業と提携することで、その国独自の文化や商習慣に適応した展開が可能になります。また、提携先が既に持っている販路を活用することで、新規顧客へのアプローチが効率的になります。

最近の事例では、大手家電メーカーが海外スタートアップと共同開発したスマート家電を、提携先の販路を使って短期間でグローバルに展開しました。これにより、販売数が大幅に伸びたという成功例があります。

新たな市場を切り開きたいと考えている企業にとって、オープンイノベーションは最適な戦略の一つといえるでしょう。

オープンイノベーションの種類

オープンイノベーションの主な種類は以下の3つです。

・インバウンド型

・アウトバウンド型

・双方向型

それぞれの違いを確認し、自社に取り入れる参考にしてみてください。

インバウンド型

自社が不足しているアイデアや技術を外部から積極的に取り込む手法です。アウトサイド・イン型ともいわれます。

 世界で広く活用されており、具体的には、外部との技術提携、M&Aを指します。一定額を支払い、他社が所有する技術の使用権を得る「ライセンス・イン」などもインバウンド型のイノベーションです。

アウトバウンド型

自社が持つ技術やノウハウを外部に提供し、新たなアイデアを広く募集する手法です。商品開発につながるような技術が自社にあったとしても具現化させるアイデアがない場合、外部機関へ技術やノウハウを提供することで、新たなアイデアを募集し共同開発を行います。

アウトバンド型のオープンイノベーションは、技術などの自社が持つ資源を外部へ提供し、対価として金銭的な利益を得ることができるビジネス戦略と言えます。

双方向型

外部機関の技術やノウハウを自社に取り入れつつ、自社のリソースを外部に提供する手法です。産学官連携、他企業との共同開発などがあります。社内外で連携してお互いに不足分を補えるため、大きな相乗効果が狙えます。

これらの手法は、企業の成長と競争力向上に貢献しています。オープンイノベーションを成功させるためには、目的や連携機関を考え、活用リソースを適切に活かすことが重要です。

オープンイノベーションの実施ステップ

オープンイノベーションを自社の戦略に生かすには、どうしたらよいのでしょうか?オープンイノベーションを実施する際のステップは以下のとおりです。

  1. 目的を明確にする:なぜやるのか、どんな課題を解決したいか
  2. 戦略をつくる:新たに参入する市場はどこか、そのために必要な自社の資源は何か
  3. 自社に足りない資源を明確にする:戦略を遂行する上で足りないリソース、障壁になるものは何か
  4. 提携相手候補の模索:必要なリソースを提供している外部組織をどんな方法で探すか
  5. 面談、合意形成:自社の特徴を伝え、双方がWIN-WINとなる状態かを確認

自社の戦略にオープンイノベーションを取り入れるには、まず内部のリソースと外部のリソースを効果的に組み合わせる方法を考える必要があります。技術パートナーやスタートアップ企業との提携を模索し、共同で新製品やサービスを開発することが重要です。

また、オープンイノベーションを推進するための社内制度や文化を整えることも欠かせません。例えば、アイデアを自由に提案できる環境を整えたり、外部パートナーとの定期的なミーティングを設けることが考えられます。

オープンイノベーションの成功事例

オープンイノベーションの成功事例は以下の記事に詳しくまとめています。

  • フィリップス
  • P&G
  • ファイテンショップイオンモール鶴見緑地店

詳しく見たい方は下記記事をご覧ください。

オープンイノベーションの成功事例まとめ!活用方法を紹介します

オープンイノベーションの事例5選!外部の視点を取り入れて革新する方法とは?

オープンイノベーションで気を付けるポイント

オープンイノベーションには、メリットばかりではなく課題もあります。他の企業とマッチングする際に気を付けるポイントをまとめました。

  • 目的と戦略を明確化する
  • 提携相手の選定は慎重に行う
  • 契約を明確化しておく
  • リスク管理を行う

それぞれのポイントについて詳しく解説していきます!

目的と戦略を明確化する

他企業と提携する目的を明確にしましょう。どのような成果を得たいのか、どのような戦略的目標を達成したいのかは非常に重要です。

曖昧な目的で始めてしまうと、リソースが分散し、成果を得られないまま終わるリスクがあります。まず、事業の目標や市場での競争優位性を明確にし、それを達成するための具体的な戦略を策定しましょう。

例えば、「新しい顧客層へのアプローチを強化したい」という場合、消費者動向に詳しいスタートアップと連携する戦略が考えられます。このように目的に沿った明確な方向性を持つことが重要です。

「何のために、誰と、何をするのか」を具体化することがオープンイノベーションを取り入れる第一歩といえるでしょう。

提携相手の選定は慎重に行う

提携相手を選ぶ際には、慎重な検討が必要です。オープンイノベーションは、相手企業の知識や技術を活用するものですが、信頼性や価値観の一致 、文化の適合性を考慮しましょう。相手企業との相性が良いことは提携の成功に大きく影響します。

実績や評判、事業の相性を事前に徹底的に調査することをお勧めします。また、候補企業とのミーティングを重ね、双方の期待値や価値観をすり合わせておきましょう。

例えば、過去に似たような連携で成果を出した企業を選ぶと、リスクを抑えられるだけでなく、スムーズな協力関係を築ける可能性が高まります。

契約を明確化しておく

提携に関する契約書を詳細に作成し、権利や義務、リスクを明確にしておきましょう。特に知的財産権や機密情報の取り扱いに注意が必要です。

提携の目的や役割分担、知的財産権の取り扱いなどを明文化しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。契約書には、万が一プロジェクトが途中で終了する場合のルールも盛り込んでおきましょう。

リスク管理を行う

オープンイノベーションには、多くの可能性とともにリスクも存在します。データ漏洩、競合企業への情報流出、プロジェクトの失敗など、事前にリスクを洗い出し、対策を講じておくことが重要です。

リスク管理の手法として、以下が挙げられます。

  • NDA(秘密保持契約)の締結
  • 定期的なプロジェクトレビューの実施
  • 情報共有範囲の制限

例えば、新技術の開発に関する情報が競合に流出した場合、事業の競争力が損なわれる可能性があります。これを防ぐため、情報共有は必要最低限に留めるなどの工夫が必要です。

リスク管理は事前準備が大切です。万全の体制を整えておきましょう。

企業と共創して新しい価値を提供できる!ライブコマース活用方法

オープンイノベーションでは、どのような外部組織とマッチングするかが最重要ポイント。企業と企業をつなぐプラットフォームはいくつかありますが、ライブ配信をしながら新たなチャンスを生み出す「ライブコマース」を活用してみてはいかがでしょうか?

ライブコマースは、リアルタイムで商品を紹介し、視聴者とコミュニケーションを楽しみながら商品を販売する手法です。

コメントを通じ、視聴者の疑問や不安をその場で解消することができます。

ライブコマースについて詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。

ライブコマースとは?魅力やメリットとライブコマース活用事例紹介

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ライブコマースアプリ「CHANCE!」では、企業と企業、企業とライバーを繋ぐコラボ配信が可能です。実際に、ライバーと健康器具企業がコラボ配信を行い、ライブコマースを活用しています。

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コラボ配信マッチングイベント参加フォーム

ライブコマースは、単なる販売チャネルではなく、顧客との関係を深めるための強力なツールでもあります。

ライブ配信中に顧客のフィードバックを直接受け取ることで、製品やサービスの改善点を迅速に把握するだけでなく、視聴者との対話を通じて、顧客のニーズや嗜好を深く理解することができます。このような双方向のコミュニケーションは、顧客との関係性を高め、長期的な関係を築くために非常に有効です。

オープンイノベーションとライブコマースの組み合わせは、新たな顧客体験を提供し、商品やサービスの販売を促進する効果的な方法といえるでしょう。

まとめ

オープンイノベーションは、企業と外部組織が協力しながら共に新たな価値を作り上げるカギとなります。オープンイノベーションで生み出された商品やサービスは、ライブコマースを活用することで、販路拡大だけでなく新規顧客取得やファンの育成にもつながるはずです。

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