見ている人が『面白い』と思うようなライブ配信にするには、何が必要だと思いますか?いくら人気でも、同じような配信内容、同じような演出のライブ配信では飽きられてしまいます。つまり『面白い』と思わせるためには、常にライブ配信へ新しいアイデアを取り入れていく必要があります。
新しいアイデアはライブ配信に限らず、ビジネスの様々な場面で重要です。例えば先日視聴したライブコマースでは、斬新なアイデアから新しいカタチの商品を開発した商品誕生のエピソードが語られました。ライブ配信中のお話から、新しいアイデアの重要性とアイデアの見つけ方のヒントを得ることができましたのでご紹介します。
・飽きない、面白いライブ配信を作りたい
・新しいものを作るためにアイデアを探している
そんな方におすすめです。
目次
商品開発やライブ配信には必須!新しいアイデアが必要な理由とは?
インターネットが普及して多くの人がスマートフォンを持つようになった現代。スマホの普及に伴い、TikTokやInstagramなどの動画を楽しめるSNSや、NetflixやAbemaなど動画視聴サービスが増えています。今ではいつでもどこでも、見たい動画コンテンツを選択して見ることができるのです。ライブ配信も、数ある動画コンテンツの中の一つです。素人から芸能人やアーティストまで配信をするライブ配信の中から、視聴者に自分のライブ配信を選んで視聴してもらうためには、ライブ配信にも視聴者の興味を引き付ける工夫が必要不可欠。
ライブ配信を行っているライブ配信者は、より多くの人に見てもらうためはどうしたらいいか?と日々試行錯誤しています。その中で、人気のライブ配信は出演者が面白いというだけではなく、動画内容が毎回異なる流れで面白味が増したり、視聴者の期待と興味をひいているものが多いように感じます。視聴者が興味を持ち、また見たいと思うような、おもしろいコンテンツを作り出すためにも、新しいアイデアは必要不可欠なのです。
新しいアイデアが必要なのは、ライブ配信者に限ったことではありません。新しい広報のキャンペーンを考えたり、新しいサービスを生み出したりと、ビジネスにおいても新しいアイデアを見つける場面は多数あります。では、どんな風にアイデアを探していけばよいのでしょうか?
先日視聴したライブコマースに登場していたのは、おもちゃメーカー「ジリリタ株式会社」の高島勇夫社長。高島さんは、何気ない日常から問題を発見、理由を分析してアイデアを見つけだし、斬新な新しいおもちゃとして形にしています。高島さんの新しいアイデアの見つけ方は、おもちゃの新商品開発に限らず、ライブ配信においても配信者のヒントになると思います。
アイデアをカタチにした商品!地域とともに作り出したジリリタの商品開発に注目
東京、赤羽にあるおもちゃメーカー「ジリリタ株式会社」から生まれた「スラックレール」。今回視聴したライブ配信は、「スラックレール」の開発者・ジリリタ代表の高島さんにお話を聞くという内容でした。そこでは伺ったのは、小さなおもちゃメーカーのアイデアから、地域の方の声をカタチにしながら商品化につながった経緯、という興味深いお話でした。
開発した注目の商品スラックレール。ヒントはスラックライン?
ジリリタが開発したスラックレールは、綱渡りが進化した究極のバランススポーツ「スラックライン」をみんなで安全に練習するためのスポーツトイ。スラックレールに乗り、バランスをとることで様々なスポーツで必要とされる体幹や集中力を養うことができます。キャンプ場や公園で、木と木の間にポリエステルで編んだベルトを渡し、その上を綱渡りのように歩いたり、飛んだりしている人を見たことはありませんか?これは『スラックライン』という、綱渡りとトランポリンを合わせたようなスポーツの一種です。
高島さんの『スラックレール』は、このスラックラインというスポーツを手軽に楽しめるようにと開発されたもの。実はこの商品アイデアは、意外なところから生まれたのです。
商品の誕生秘話!地域の問題を解決するスラックライン
高島さんのお子さんが小学生のころ、小学校の裏の公園で不審者の目撃情報が増えたことをきっかけに、おやじの会(保護者)のメンバーから『公園をパトロールをしましょう』と言う意見が出たそうです。しかし、通常のパトロールで見回りをするだけでは、なかなか人を集めることが大変な上に、モチベーションが上がりにくいですよね。そこで高島さんがそのころ興味を持っていたスラックラインを公園に設置してみました。みんなが公園に集まる環境を作れば、不審者も公園に来にくくなるのではないかと考えたのです。
すると、大人も子供も、公園に張られたスラックラインに夢中になり、公園はあっという間に人の集まる場所へと変化。治安の悪かった場所を、人が集まる交流の場と変えることが出来ました。
高島さん:
子供たちだけではなく公園内の離れたところで体操をしていた高齢者の方にも『一緒にやろう』と声をかけたんです。しかし、『高いから怖い』と言われました。
スラックラインは、バランス力や体幹を鍛えるのにも適したスポーツなので、高齢者の健康づくりにも役立つはず。しかし既存のスラックラインは、高さが高齢者にとって不安要素だと把握した高島さんは、『スラックラインを誰でも安心して遊べるものにしたい』と思ったそうです。そこでアイデアを探したところ『落ちる心配がないように地面からの高さを無くし、誰でも安心して使えるように柔らかい素材で作ればいいのでは?』と具体的な改良案を思い至りました。
そこから、床に置くだけでトレーニングできるというコンセプトから作られた『スラックレール』が作成されました。小さなお困りごとを見逃さず、何か自分にできることはないかと考えた結果、誰でも楽しめるスラックレールが出来上がったというわけです。
危ないから高齢者には難しい、高さがないと出来ないなど、スラックラインの固定概念にとらわれず、柔軟な発想を持てたことが今回の発明が成功した理由。出来ないのなら諦めるのではなく、どうしたら出来るようになるかと発想すると、今までにはなかった新しいものが生まれるなどチャンスに繋がると感じられます。
地域のパトロールをきっかけに、みんなで楽しめるスポーツトイを作りたいという目的のもと生まれたのがスラックレール。子どもや高齢者など、一部の人をターゲットにせず年齢によって楽しめない方がいないように、各々交流しながら地域を活性化していけるように、という願いが込められています。
スラックレールという共通の話題から、交流が発展していく。まさに『人と人をつなぐレール』のようなおもちゃとして、スラックレールが多くの人に愛されることを目指している高島さん。その取り組みの一つとして、団地の一角を『ジリリタ桐ヶ丘ラボ』に設定し、誰もがふらっと集まれる居場所としての役割を与えました。スラックレールを通じて年齢や国籍、障がいを問わず人が集まることで、自然と会話が生まれたり、子ども達が遊んだりできる場所となっています。
開発した商品に込めた思い。新たなアイデアが見つかる高島さんの作る「余白」
スラックレールに限らず、ジジリタのおもちゃは「余白」を大切にしています。
高島さんの考える余白とは、『使い方はこうです。』と限定するのではなく、『こんな使い方も、あんな使い方もある。みんなで新しい遊び方を考えよう。』というような、使う人が自由な発想を生み出すこと。この「余白」を大切にして、多くの人に楽しんでもらえる商品作りを心がけていると話されていました。
例えば、ジリリタのおもちゃの中に「ASHIBO」という商品があります。この商品は、建設現場の足場にヒントを得ている製品で、ASHIBO専用の特注ストローとそれをつなぐジョイントパーツの2種類、というシンプルな部品で遊べるように設計されています。自由自在に形を作って楽しむことができます。しかしこの商品は、こうやって組み立てたらこんな物が作れるという、いわゆる説明書というものはないそうです。子供たちの自由な発想を使って自由に遊んでほしいという想いから、説明書はあえて作っていないのだとか。
『こうあるべき』、『こうやって遊んで』と断定せずアソビの中でアイデアが生まれるような「余白」を持たせているのがジリリタのおもちゃの特徴なのです。高島さん自身も、『こんなものを作りたい』というアイデアを、遊びの中で楽しみながら生み出していると語ります。
2022年9月にはCHANCE!ライブでジリリタの高島さんがライブ配信に登場し、スラックレールの使い方を教えていただきました。ライブの様子はこちらをご覧ください。
おもちゃメーカーの商品開発に学ぶ!アイデアを見つける5つのヒント
ちいさなアイデアの積み重ねがある時大きく膨らんで、新しい商品やサービスが生まれていきます。スラックレールの誕生からも、まず元になるアイデアのタネを作り、そこに新たなアイデアを加えながら形となっていくことが分かりました。
高島さんはいろいろなタイミングでアイデアを拾い集めています。そこで、高島さんのお話から、日常のどこにアイデアのタネが隠れているのか、新たなアイデアを見つけ出すための5つのヒントをまとめてみました。
アイデアのタネ1.困っていることと組み合わせてアイデアを探す
基本的に、サービスや商品というものは、誰かの悩みや困っていることを調査・解決し便利にするものが多いです。つまり悩み、「困っていること×アイディア=ニーズ」が見つかるかもしれないというわけです。
例えば忙しくて家事をするのが大変な人にとって、家事代行サービスは自分の困りごとを解決してくれるサービス。材料を入れれば自動で調理してくれる電気調理鍋は、忙しくて料理する時間が取れない人の、力を入れずに自転車を走らせることができる電動自転車は、子どもをのせて坂道を上がるのが大変な人の困りごとを解決してくれます。つまり、アイデアを出すときは、周りに困っている人がいないか観察してみることが大切なのです。
高島さん:
うまく走れない子を見たら『何が問題なのか?』と考えてみます。おばあちゃんたちに『腰が痛い』『膝が痛い』と言われたら『健康のために手軽に体を動かして運動する方法はないか?』と考えてみます。
ライブ配信や動画で言うと、『こんな商品があればいいのにな』、『こんな面白い内容があればいいのにな』という視聴者のコメントからアイデアを探るということもできます。『もっとこうしてほしい』、『もっと知りたい』と視聴者から発信される言葉の一つ一つが面白いもの、求められているものに繋がっていくかもしれません。
高島さん:
困っていることがあれば、さらに一歩踏み込んで『楽しさをプラスして、何か手伝えることはないかな?』と組み合わせて考えていくんです。
高島さんは「すべてをアソビに」という言葉を理念に掲げています。おもちゃメーカーとしての「アソビ」という強み×困っていることを組み合わせて考えることで、新しい商品のアイデアに繋がっているのです。
アイデアのタネ2.場所の特性を活かしてアイデアを探す
スラックレール誕生のきっかけとなったのは、治安の悪い公園でした。「スラックラインを張った公園」と「楽しんで遊ぶ子供や大人たち」を掛け合わせることで、人の集まる場所づくりを実現するまでの過程では、様々な模索があったのではないでしょうか。
- 治安が悪いのは人が少ないから?どうすれば人は集まるのだろうか?
- 子供や大人が楽しいと思えるにはどうすればいい?
- もともとは公園。公園でどんなことができるかな?
- 公園の見回りだけは楽しくない。どうすれば楽しく見回りできる?
『治安の悪い公園』を観察して、治安の悪い原因を探ったり、公園でできることを考えたりと、考えを深める中で、スラックラインというアイデアにたどり着いたのではないでしょうか。
そうは言っても、考えが煮詰まってしまうこともあるでしょう。そんな時は、全く違う場所に行ってみるのがおすすめです。例えば渋谷のスクランブル交差点前、東京駅構内、大阪の通天閣など、人の多い観光地や名所に行ってみるのはどうでしょうか。全く違う場所に行ったら、さらになぜここに人が集まるのか?を考えてみましょう。
- 魅力的な観光施設や商業施設があるから?
- 人情味あふれる商店街があるから?
交通の利便性、土地の魅力、そして人の魅力など、その場所に行きたいと思う理由を考えてみると、何かイメージやヒントが見つかるかもしれません。場所の魅力が分かったら、『この公園にはなぜ人が集まらないのか?』という、反対のことを考えてみるのもいいでしょう。
特にライブ配信ではいつも同じ場所で撮影しているのではなく、外に出たり、『〇〇してみた!』という内容で、ありとあらゆる場所から発信しているものを見つけることができます。いつもはいかない場所に行ってみたり、体験をすることで新たな気づきが得られ、毎回同じ内容という状況を変えられるかもしれません。
アイデアのタネ3.様々な人との会話でアイデアを探す
新しい場所に行ってみることと似ていますが、人と話すことも大切です。人と話すことは、ある種の消費者への市場調査にもなります。例えばスラックレールは、公園にいた高齢者の方の『高いから怖い』、という声がなければ誕生しなかったかもしれません。この高齢者の方の声は、高島さんが『一緒にやろう』と高齢者に声をかけたことで聞くことができました。つまり、高島さんと高齢者の方がスラックラインについて会話をしたことから、地面に置いて誰でも安全に使える「スラックレール」というアイデアが誕生したのです。
最近では遠くにいる人ともオンラインで会話することも簡単にできるようになりました。仕事のちょっとした困りごとや、道端にいたネコがかわいかった、などと何でもない雑談をしているうちに、ハッとアイデアが浮かぶことがあります。また、いつも同じ友達、いつも同じ仕事仲間とだけ話していると、同じような内容ばかりになりがちです。自分の知らない世界を見るためには、さまざまなバックグラウンドを持つ人と会話することが大切です。
例えば、異業種の仕事をしている人、独身の人、結婚して子供がいる人、経営者、教師、研究者など、自分が経験していないことを経験している人と話をしていると、新しい知識や知らなかったスキル・可能性など学ぶことが多いです。そのためには、
- 習い事や地域のコミュニティなど、新しい関係性を築ける場所に参加する
- 友達同士でそれぞれの友達を紹介しあう
などの方法も有効かもしれません。
人気のライブ配信や動画でも、毎回同じ出演者というわけではなく、普段は一緒に活動しない人とのコラボなどを目にします。面白いなと感じたのは、いつもはロックなど激しい音楽を専門にしている歌手が、演歌歌手とコラボした動画を目にした時です。ロックな音楽の中に演歌の独特な曲調や歌い方が混ざり新しい音楽を聴いているようで非常に面白いと感じました。
コラボ配信に限らず、いつもは出会わない人、分野に触れてみるというのもそこからまたアイデアが生まれるきっかけになるかもしれません。
アイデアのタネ4.新しい体験からアイデアを探す
これまでにやったことのない新しいことに挑戦してみるのも、アイデアを探すためには効果的ではないでしょうか。高島さんの場合、「見回り」や「スラックライン」という新しい体験がありました。
- ただの見回りをもっと面白くするにはどうしたらいいんだろう
- スラックラインというスポーツを安全に楽しむにはどうしたらいいんだろう
こうした疑問は、実際に見回りやスラックラインを経験したことで生まれた疑問です。
新しい体験は、「見回り」のようにその時の状況や、環境の変化で意図せずに体験できることもありますが、待っていても新しい体験にめぐり合わないときもあります。そんな時は「スラックライン」のように新しいスポーツをやってみるのも手段の一つです。新たな気づきや発見からアイデアが生まれることもあります。
スポーツ以外にも本や芸術に触れてみることもお勧めです。自分の感性を磨くためには、芸術に触れることが大切だと聞きます。大切なことは、芸術を『理解すること』でも『そこからアイデアを絞りだそうと思うこと』でもなく『芸術に触れること』。芸術体験から発想の転換を感じることもあるのではないでしょうか。
やったことのないスポーツ、見たことのない本や触れたことのない芸術も大切ですが、新たな体験から新たなアイデアを見つけるために、もっとも重要なことがあります。それは、体験から『何を感じたのか』『なぜそう思ったのか』を意識すること。新しい体験をした時に感じたことが、アイデアのヒントにつながることもあるはずです。
アイデアのタネ5.仕事や日常の中にある「楽しい」からアイデアが膨らむ
日常生活だけでなく、仕事においても楽しむことは大切です。仕事の合間にふと楽しいことを見つけて、ほっと一息ついたことはありませんか?リフレッシュした後は仕事が効率良く進められたり、思考が柔らかくなってアイデアが浮かびやすくなったり、ということもあるのではないでしょうか。仕事中の様々な場面でも『楽しむこと』が、アイデアのタネづくりのきっかけになります。そのためには、常日頃から楽しむ工夫を意識することが大切です。
ジリリタ株式会社では、「すべてをアソビにもっと自由に」を理念として掲げています。実際に高島さんのお話のなかでも、見回りを楽しめないか、困りごとを楽しく解決できないかという発想から、様々なことに『楽しいアソビ』をプラスしようという高島さんの姿勢を感じました。
先日ラジオで、デジタルアートとセンサーを活用した、新しいリハビリツールが紹介されていました。ただ立ち上がるだけのリハビリではなく、「立ち上がった壁部分に表示された動物をタッチする」ことで、ゲーム感覚で楽しめるツールです。楽しめるような工夫をすることで、モチベーションや気持ちが違ってくるものですね。
出典:https://www.digireha.com/
高島さんがおもちゃを作る際に意識している「余白」も、さらなるアイデアにつながる「楽しさ」を作り出すためではないでしょうか。余白を作っておくことで、意図したこととは違う「楽しい」が生まれ、その楽しさをヒントにまた新たなアイデアが生まれていくのかもしれません。これはライブ配信においても有効です。「余白」を作っておくことで、その余白に視聴者のコメントやライブ中のハプニングがプラスされ、意図しなかった楽しいライブ配信が生まれることもあるかもしれません。
まとめ
新しいおもちゃを生み出すジリリタ代表の高島さんのライブ配信から、アイデアのタネを探す5つの方法をまとめました。
- 困っていることと組み合わせること
- 場所の特性を生かすこと
- 様々な人と会話すること
- 新しい体験に挑戦すること
- 仕事や日常の「楽しい」を見つけること
私が今回のライブ配信で一番勉強になった点は、アイデアのヒントは身近なところにあるということ。つい頭で考えすぎてしまいますが、色々なことに挑戦することでアイデアのタネを見つけることができます。高島さんから学んだおもちゃメーカーの商品開発の際の新しいアイデアの見つけ方が、おもしろいライブ配信のコンテンツ作りにもヒントになるのではないでしょうか。
ジリリタ株式会社についてもっと詳しく知りたい方はこちら:https://gililita.co.jp/