「クリエイターエコノミー」とは、自身の作品や技術で収入を得ているクリエイターが、固定ファンや顧客を増やし、安定的に収入を得るために形成するべき経済圏のことをいいます。
WEB2.0と言われる、誰もがウェブ上で自由に情報を発信できるようになったSNSの時代において、音楽やアート、ゲーム、ブログ、音声、オンラインサロンなど、さまざまな表現やそれに伴う集客がネット上のみで完結できるようになりました。そして、クリエイティブな才能を発揮しているアーティストは、ファンや顧客を囲い込むことによって収入を得ることが出来るようになりつつあります。
そこで今回は、ますます発展していくことが予想される「クリエイターエコノミー」について、その市場規模や注目される理由、クリエイターエコノミーにおける新たな戦略について解説していきます。この記事を読めば、クリエイターエコノミーの将来性や形成をする上での成功の秘訣がわかります。
目次
クリエイターエコノミーとは
「クリエイターエコノミー」とは、個人のクリエイターがその活動を通してファンや顧客から定期的な収益を得ていくことをいいます。例えば、YouTubeではスーパーチャット(スパチャ)というバーチャル通貨『投げ銭』機能で、視聴者からお金を集めることができるようになりました。
また、インスタで活動している『インスタグラマー』と呼ばれる人たちは、その注目度の高さを利用し、企業から広告案件を受注したり、ライブコマースを行うようになっています。他にも、人気のクリエイターやアーティストは、Spotifyなどの月額課金制(サブスクリプション)のコンテンツを配信したり、会員になった人だけが楽しめるクローズドなコミュニティの『オンラインサロン』を運営したりしています。
個人や企業が挑戦したい夢や事業を実現させるために、その資金を募る『クラウドファンディング』も収入を得る一つの方法となっています。このようにして、SNSやさまざまなプラットフォームの発展によって、個人が収入を得る手段が増えています。また趣味や副業の域を超えて、クリエイター活動を本業として生計を立てる方も増えています。
プログラマーやデザイナー、Webライターといった仕事において『クラウドソーシングサービス(企業がインターネット上で不特定多数に向けて業務を依頼する業務形態)』を利用し働くフリーランスも、クリエイターエコノミーを形成出来る人たちの一部です。また、コロナ禍によって在宅勤務になったり、個々人のインターネットの利用時間が増えたこともクリエイターエコノミーの形成を加速させる要因の一つとなっています。
ライブ配信の『投げ銭』のメリット・デメリットについてはこちらの記事がおすすめです。
クリエイターエコノミーの市場規模
コロナ禍で拡大してきている「クリエイターエコノミー」の経済圏ですが、具体的な市場規模や今後はどのようになっているのか気になると思います。詳しく解説していきます。
世界の市場規模
アメリカの SignalFire 社の調査によれば、クリエイターエコノミーを形成する人たちは世界で5000万人以上いるとされています。そのうち200万人がプロのクリエイターとしてフルタイム以上の収入を得ているそうです。また、NeoReach Social Intelligence APIとInfluencer Marketing Hubの共同調査によれば、クリエイターエコノミーの市場規模は2021年時点で1,042 億ドル(約11兆4400億円)とのことです。
Facebook やInstagram などを展開するメタ(旧Facebook)は、2022年末までに自社のSNS上で活躍するクリエイターに、総額10 億ドル(約1,100 億円)超の報酬を配分すると発表しています。
参照:https://signalfire.com/blog/creator-economy/
参照:https://neoreach.com/creator-earnings/
日本の市場規模
クリエイターエコノミー市場は日本でも成長しつつあります。デジタルインファクトの調査によれば、日本のインフルエンサーマーケティングの市場規模は2020年に317億円だったものが、2021年には425億円と大きな伸びを示しました。これは世界におけるクリエイターエコノミーの推定規模の1割に相当すると考えられています。今後の予想は、2022年に519億円、2025 年には723億円と拡大傾向の見通しとなっています。
また、日本では2021年に『クリエイターエコノミー協会』が設立されました。クリエイターエコノミーの普及・促進とその活性化に向けた様々な活動を実施することが目的となっています。クリエイターエコノミー協会には、
- BASE株式会社
- 株式会社CAMPFIRE
- note株式会社
- UUUM株式会社
- 株式会社ココナラ
- ピクシブ株式会社
- ピクスタ株式会社
- 株式会社マネーフォワード
などの有名企業がパートナーとなっていて、クリエイターエコノミーの発展を支援しています。
出典・参照元:https://creator-economy.jp/
出典・参照元:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「国内クリエイターエコノミーに関する調査結果」https://www.murc.jp/report/rc/report/consulting_report/cr_221017-02/
WEB3で今後さらに拡大するクリエイターエコノミーの市場規模
すでに世界各国で拡大をしているクリエイターエコノミーですが、今後の市場規模はさらに拡大すると見られます。なぜなら、クリエイターエコノミーはWEB3において本格的な普及と発展が見込まれるからです。
WEB3(WEB3.0)を説明するには、まずブロックチェーンについて話さなければなりません。ブロックチェーンは、暗号技術を利用して、データの改ざんを簡単に検出できる仕組み。また多数の参加者が全員の取引記録のデータを持ち、リスクを分散するシステムのこと。これをベースにした、非中央集権的なプラットフォームを使用する、新しい時代のインターネットサービスのことです。
これまでのインターネットサービス(WEB2.0)では、SNSやクラウドサービスをGoogleやメタ(Facebook)、Amazonなどの中央集権的な組織や団体が運営していました。WEB2.0によって、個人は情報を発信・共有したり、コミュニティを形成したりして、新しい繋がりやビジネスを生み出すことができるようになりました。そしてクリエイターエコノミーは、インターネットとGAFAのようなプラットフォーマーの発展によって可能になりました。
しかし、中央集権的なプラットフォーマーは、その力が強すぎるあまり寡占状態となっており、自由な発信を阻害されたり、手数料を多く取られたりして、競争が起きにくい状況にあります。これではクリエイターの力も発揮しきれないですし、セキュリティや個人情報保護などの課題も大きいです。
これらの課題を解決するのが、WEB3(WEB3.0)です。ブロックチェーンをベースにした非中央集権的なプラットフォームなら、多くの人が安全かつ低コストで発信や課金ができるようになります。
クリエイターは「メタバース」で自分の作品を展示したりファンや顧客とコミュニケーションを取ったりできます。このメタバースとは、コンピューター上に作られた三次元の仮想空間やそこで行われるサービスのこと。ドコモがCMを放映しているので知っている方もいらっしゃるかと思います。
また、メタバース上では「NFT(非代替性トークン:偽造不可能な鑑定書、または所有証明書がついたデジタルデータ)」を利用することによって、唯一無二の価値を持ったデジタルアートや音楽、映像、ゲームなどを、売買したり高値でコレクションしたりできるようになります。例えば、自分の描いたイラストをNFTにして販売することで、容易にコピーや改ざんをされにくくなり、商品価値を担保出来ます。
WEB3のプラットフォーム内では専用のウォレットとトークン(仮想通貨)によって、個人同士が安全に貨幣価値の交換ができるので、自宅にいながら世界中の人とメタバースを通じてNFTをやりとりする未来がすぐそこまでやってきています。クリエイターエコノミーの発展は、まだまだ途上段階です。むしろ、これからのWEB3の時代こそが本当のクリエイターエコノミーの時代と言えるでしょう。
クリエイターエコノミーが注目される理由・メリット
クリエイターエコノミーが注目されるのには、クリエイターにとって大きなメリットがあるからです。クリエイター視点で考えた場合、クリエイターエコノミーが注目される主な理由やメリットは以下の3つです。
1.ファンや顧客を囲い込める
クリエイターエコノミーが注目される1つ目の理由は、ファンや顧客を囲い込めるから。これまでインターネットで集客をしようとすると、プラットフォームの集客力に依存したり、高額な費用を払ってWEB広告を配信したりする必要がありました。
SEO、SNS、ディスプレイ広告など、集客手段は多くあります。しかし、SEOで順位が一時的に上昇したり、SNSでバズったりして瞬間的に大きな集客ができる時があっても、継続的な集客、いわゆる『ファン』にはなってくれないため、継続的な収益を出し続けるのは厳しいのが現実です。そのため、クリエイターとしての安定した収入を確保するのは至難の業でした。
一方、クリエイターエコノミーを形成できたならば、囲いこんだファンや顧客はたとえプラットフォームが変わっても、広告を打たなくても安定してクリエイターのことを応援してくれます。その結果継続的な集客と収益を得ることもできます。クリエイターエコノミーは、クリエイターにとって死活問題である収益の確保をより確実なものにできます。なぜなら、プラットフォームや広告に頼らずに、ファンや顧客を囲い込めるからです。
2.アカウントが停止される心配がない
小さな規約違反や通報が繰り返されることによって、プラットフォーム側からアカウントを一時停止、または削除されることがあります。クリエイターにとってアカウントの停止や削除は死活問題です。アカウントの削除や停止が起こると、それまでに積み上げてきたPRや顧客との関係性といった努力が水の泡になるからです。
一からアカウントを育てるのには、多大な労力とコストがかかります。大切なアカウントを削除されたら、そこでクリエイターの心も折れてしまうかもしれません。そのため、現在クリエイターはプラットフォームの規約に違反しないように活動内容を制限したり、サブアカウントを作ってリスク分散をしたりします。
しかし、クリエイターエコノミーが形成できれば、プラットフォームのアカウントが停止になっても大きな問題になりません。クリエイターのファンや顧客はプラットフォームに依存しなくても、クリエイターを追いかけてくれるからです。例えば、YouTubeのアカウントが停止されてもインスタグラムやTwitterにアカウントを作れば、そちらにファンや顧客が流れ込んでくれます。ファンや顧客がアカウントをフォローするかどうかは、プラットフォームの種類によるものではなく、クリエイターの発信内容を受け取れるかどうかで決まるからです。
クリエイターエコノミーを形成できていれば、ファンは次のアカウントを探してくれるため、1つのプラットフォームのアカウントを停止、削除されても死活問題にはなりにくいでしょう。
3.中間マージンを取られない
クリエイターにとって、プラットフォームに中間マージンを取られることは収入の減少につながります。ファンや顧客から1000円の対価をもらっても、プラットフォームが10~30%程度の手数料を徴収するのが一般的です。仮に20万円の収益があっても、手数料が20%なら手取り額は16万になってしまいます。そこから生活に必要な税金や保険を支払ったら、生活に使えるお金はさらに少なくなるのです。
特にライブ配信中心のプラットフォームではより縛りがあり、1日●●時間以上稼働、●●ポイント以上獲得など、収入を受け取るためには条件をクリアしなければならないことがあります。しかし、クリエイターエコノミーを形成できれば、中間マージンをできるだけ少なくすることが可能です。クリエイターと顧客が直接決済することもできるようになるからです。
FacebookやYouTubeなど巨大企業の仲介なく直接ファンや顧客から対価を得られる経済圏を形成できれば、個人同士が安全に売買ができるだけでなく、スマートコントラクト(あらかじめ設定されたルールが満たされると、自動的にプログラムが実行される)という機能によって自動的に契約を実行することができます。
また、今まで以上にクリエイターに仕事を依頼したいという企業が増えれば、プラットフォームを通さないで直接契約ができるようになるでしょう。あるいは、従来のプラットフォームを利用する場合でも、中間マージンの高いプラットフォームはクリエイターが敬遠するようになります。そのためプラットフォーム側はクリエイター側に使ってもらうために、手数料を安くするなど価格競争が起きるでしょう。
クリエイターにとって、中間マージンはできるだけ減らしたいコストです。クリエイターエコノミーを形成することができれば、クリエイターは今までと変わらない仕事をしていても、結果的に手取り額を増やすことができます。クリエイターエコノミーは、世界中で市場規模が伸びていて、個人のさまざまな活動が収益を生むようになっています。
クリエイターエコノミープラットフォーム『note(ノート)』
クリエイターエコノミーが注目される理由について見てきましたが、次は実際にどんなプラットフォームがあるのか実例を紹介します。クリエイターエコノミーを形成できるサービスの1つが「note(ノート)」。「モノづくりが好きなみんなのための街のような場所」をコンセプトに運営されているプラットフォームで、クリエイターエコノミー協会のパートナーにもなっています。
noteは文章や画像、音声、動画といったコンテンツが投稿できるサービス。個人はもちろん企業や自治体も利用する情報発信ツールとなっています。機能は、電子書籍のように自分の書いた文章を販売する他、月額制のメンバーシップサービスをリリースしたりすることもできます。また月額500円のプレミアム会員になれば、定期購読マガジンの発行や予約投稿機能、販売価格の上限が1万円から5万円までアップなど、さまざまなアレンジが出来るようになります。
noteの会員数は、2022年4月時点で500万人を突破。前年対比で30%の伸びとなりました。アーティストや作家として活動する人はもちろん、子どもからビジネスマン、主婦、シニア世代まで幅広い利用者が個人の創作活動を発信しています。また創作活動を応援するユーザーが多数いるのがnoteの特徴。『良い』と思ったコンテンツは個人クリエイターのものでも買ってくれる層が存在します。
noteの発表によると、noteで収入を得ている人は10万人を突破し、年間売上TOP1000のクリエイターの平均は667万円。累計で1億円以上を稼いだ方も28人いるとのことです。
note以外にも、YouTube、ツイッター、インスタグラムなどのSNS、BASE、Shopifyなどのeコマースサービス、CAPFIRE、Makuakeなどのクラウドファンディング、クラウドワークス、ココナラなどのクラウドソーシングサービスなど、日本で利用できるプラットフォームには多種多様なものがあります。目的に応じて使い分けてみてください。
参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000102.000017890.html
クリエイターエコノミーを加速する『ライブコマース』
クリエイターエコノミーを形成して安定した収益を確保するには、ファンや顧客を増やし続けることが必要です。ファンや顧客が増えることで、商品そのものの販売量が増えたり、サブスクリプションや投げ銭などの課金額を増やせるからです。しかし、簡単にファンや顧客が増えるものではありません。良い作品やコンテンツをたくさん作ることも大切ですが、ファンや顧客との関係性を強化することも欠かせないのです。
ファンや顧客を増やしていきたいと考えるなら、ぜひ取り入れたい取り組みが『ライブコマース』。ライブコマースとは、ライブ配信とeコマース(インターネット上での売買)を融合した新しいコミュニケーション手法です。ライブコマースなら、自分の作品やコンテンツを視聴者に向けてリアルタイムで紹介できます。クリエイター自身の発信力を高めたり、思いを伝えることができ、新たなファンや顧客の獲得もできます。
視聴者からの質問やコメントを分析すれば、今後の作品やコンテンツ作りの参考にできますし、ファンや顧客のリアルな声に寄り添えば、関係性を強化することもできます。視聴者が気に入った作品やコンテンツはその場で購入してもらうことができるので、クリエイターとしての収益を増やすことも出来ます。ライブコマースを取り入れれば、
- ファンや顧客とコミュニケーションができ、関係性を強化できる
- リアルな声の分析でき、今後の活動に役立つ
- より収益を増やすことができる
【おすすめ記事】日本の企業が実施するライブコマース事例です。
まとめ
クリエイターエコノミーの市場規模は年々拡大しています。クリエイターエコノミーを形成すれば、ファンを囲い込み、アカウントを閉鎖される心配がなくなり、中間マージンを抑えることができます。そしてライブコマースを併用することで、顧客とのより強固な関係性を作ることが出来ますのでぜひ挑戦してみてください。